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2019年1月31日 木曜日 - 雑事雑談    No Comments

日本語という怪しく美しきもの

日本人としては生まれてこの方日本語しか使ったことがないので難しいと思ったことなどないが、外国人にとっては非常に難しい言葉らしい。なにしろ男言葉と女言葉がある。アメリカ人女性には日本語の女言葉はあまりに女を出し過ぎている言葉だから嫌いだという人もいるくらい男と女の違いを言葉そのものが表している。

英語には日本語のような女言葉はない。女も男も大人も子供も同じ言葉を話す。平等意識は生まれながらに備わるはずだ。兄弟の上下もない。親子でも同じ言葉なので名前で呼び合っても違和感などあるはずがない。移民にとってはこれほど便利な言葉はないだろうと思う。

ところが日本語は違う。年齢の上下で言葉使いが違う。敬語や謙譲語などがあって昨今の日本人は使い方を間違う者も多くなったくらいだ。外国人には難しいわけだ。

アメリカの英語に女言葉がないというのは女が無視されてきた証拠なのである。別に男女平等が根本にあったわけではない。女は男の肋骨から作られた付属物だと考えられてきたからだ。中世を経験していないせいで年齢の上下も何の価値もなかったので兄弟にも上下はない。親子といえども同じだ。歴史が浅いせいもあるだろう。それでも仲間ができれば自然にリーダーが必要となってくる。リーダーは能力で決まる。親子関係も親に指導力がなければ子は従わない。歴史的に能力主義の国なのだ。

日本語は儒教の影響で身分による使い方が複雑になって、親子や兄弟もそれぞれに言葉使いが必要になった。男も女も同じである。これは神話にもあるように人は皆役割分担があるという考えが元にあるからだ。為政者は為政者らしい態度で為政者らしい言葉使いをし、民は民らしく、親は親らしく、子は子らしく、男は男らしく、女は女らしく振る舞い、それらしい言葉を使うのが日本人の文化・習慣となったのだ。為政者が為政者らしくというのは私利私欲に走らず公のために尽力するという意味である。為政者が威張るのは日本の伝統に反するのだ。君主である天皇は最も私利私欲のない存在なのである。

アメリカの英語には汚らしい罵詈雑言が数多くあるという。あまり知らないが悪口は数限りなくあるそうだ。常に力を頼って争ってきた開拓者の歴史があるからかも知れない。男言葉しかないのも女が女らしくしている暇はなかったからかも知れない。

一方日本語には汚らしい罵詈雑言は数えるほどしかない。悪口が他の言語と比べて極端に少ないのだ。従って反対に日本語には美しい表現が多い。色の表現や雨の名前など自然の描写には他の言語に類をみない美しさにあふれている。

これは日本人の心が美しいからなどという話しではない。日本人は古くから人間の憎しみや恨みは天変地異を招くと考えてきた。それだけ自然災害が多いからだが、人間の魂の存在を信じることから、人の恨みや憎しみをかうことは極力避けようとしてきたのだ。だから悪口の種類が少ないのである。

また縁起が悪い、つまり運の悪いことを招きそうなことも避けてきた。言い回しを変えて避けようとしたのだ。スルメをアタリメと言い換えたり、結婚式では”別れる”、”切れるは”使わないなどがそれだ。科学的には意味のないことだが、心情的に日本人は悪い運を避けようとするのだ。魔法使いのように言葉には言霊という霊力があると信じている日本人は多い。

アメリカ人は死体のことは単に”Body”という。単なる肉体といった感じだろう。日本語では遺体という。日本人は魂の存在を信じるので、死体は魂が抜けて残された身体という意味で遺体というのだ。または祖先が残してくれた身体という意味でも使う。儒教でいう「身体髪膚これを父母に受く・・」である。

こうした歴史を背景にした言語だからそれを知らない者には難しいし理解もできないと思う。しかしこれが民族の歴史、言語の歴史というものなのだ。これを疎かにすれば日本語が死に日本人という民族が死ぬことになる。今の日本人は歴史の浅い、男言葉しかないアメリカ英語など知らなくても良い。それに勉強するまでもない。聞き流せば解るくらい簡単な言語だからである。日本語をしっかりと学び伝えることが今の日本人に必要とされていることだ。

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